雨のバス停
田舎の小さなバス停をテーマにした作品が大好きなのです。
旅行先の山道などで小さなバス停を見つけると、物語の匂いがしてきてゾクゾクします。
1時間に1~2本しか来ないバスをどんな人がどんな風に待っているんだろう?
ここから乗る人は何処へ行くのだろう?
誰がこのバス停にこの建物を建て、そして誰が手入れをしているんだろう?
この作品を制作している時の私は、路線バスを乗り継いで気ままな一人旅を
している若者でした。
雨がしとしと降る中、いつ来るか知れないバスを待ちながら、何度も読み返して
ぼろぼろになってしまったお気に入りの本を読んでいる。
ふと、何かの気配を感じた気がして顔を上げると、雨に濡れた紫陽花が目に入る。
![](http://dollhouse-runa-blog.com/wp-content/uploads/2020/08/IMG-9401-171x300.jpg)
1人でバスを待つ身を慰めようとしてくれているのか。
それとも雨に濡れて光るきれいな私を見て、とささやきかけているのか。
そっと本を閉じて、静かな雨の風景を全身で感じてみる。
かすかに漂う雨に湿った緑の匂い。
軒下にきらきら輝く雨粒。
![](http://dollhouse-runa-blog.com/wp-content/uploads/2020/08/0097_original-300x200.jpg)
まるで世界に自分しかいないみたいな、不思議な、心地よい静けさ。
さっきまで、バスが早く来ないかじりじりしてたのにな。
今はまだ来ないで欲しいと思ってる。
もう少し、こうして雨の気配を感じていたいから。
私の物語、いかがですか?
実は、同じテーマで昔制作した作品で印象的なエピソードがあります。
その作品をイベントで展示販売していた時の事。
私のブースに何度も何度も足を運んでは、熱心に眺めるお客様がおりまして、
「何かお探しですか?」
とお声をかけたところ、バス停の写真を指差し
「私の実家の近くに、こんな感じのバス停があって、偶然ですけどバス停の名前も同じなんです。」
と。お買い物の予算を超えていたので、購入を決めかねておられたのですが
結局、諦められないからとお買い上げ下さいました。
バス停の名前まで同じなんて、奇跡のような出逢いですよね。
あの作品は、きっと今も大切に飾られていることでしょう。
それを思うと、とても幸せな気持ちになります。
私は作品をつくる時、自分の中で物語をしっかり描き込みます。そうする事で作品に深みが生まれて、
見る人ごとの物語が生まれてくると思うからです。
今回のこの作品も、いつかきっと素敵な出会いに恵まれる事でしょう。
そうだったらいいな。
皆さまはどんな物語を描かれましたか?
そのお話を私にも聞かせて下さると嬉しいです。
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