雨のバス停
田舎の小さなバス停をテーマにした作品が大好きなのです。
旅行先の山道などで小さなバス停を見つけると、物語の匂いがしてきてゾクゾクします。
1時間に1~2本しか来ないバスをどんな人がどんな風に待っているんだろう?
ここから乗る人は何処へ行くのだろう?
誰がこのバス停にこの建物を建て、そして誰が手入れをしているんだろう?
この作品を制作している時の私は、路線バスを乗り継いで気ままな一人旅を
している若者でした。
雨がしとしと降る中、いつ来るか知れないバスを待ちながら、何度も読み返して
ぼろぼろになってしまったお気に入りの本を読んでいる。
ふと、何かの気配を感じた気がして顔を上げると、雨に濡れた紫陽花が目に入る。
1人でバスを待つ身を慰めようとしてくれているのか。
それとも雨に濡れて光るきれいな私を見て、とささやきかけているのか。
そっと本を閉じて、静かな雨の風景を全身で感じてみる。
かすかに漂う雨に湿った緑の匂い。
軒下にきらきら輝く雨粒。
まるで世界に自分しかいないみたいな、不思議な、心地よい静けさ。
さっきまで、バスが早く来ないかじりじりしてたのにな。
今はまだ来ないで欲しいと思ってる。
もう少し、こうして雨の気配を感じていたいから。
私の物語、いかがですか?
実は、同じテーマで昔制作した作品で印象的なエピソードがあります。
その作品をイベントで展示販売していた時の事。
私のブースに何度も何度も足を運んでは、熱心に眺めるお客様がおりまして、
「何かお探しですか?」
とお声をかけたところ、バス停の写真を指差し
「私の実家の近くに、こんな感じのバス停があって、偶然ですけどバス停の名前も同じなんです。」
と。お買い物の予算を超えていたので、購入を決めかねておられたのですが
結局、諦められないからとお買い上げ下さいました。
バス停の名前まで同じなんて、奇跡のような出逢いですよね。
あの作品は、きっと今も大切に飾られていることでしょう。
それを思うと、とても幸せな気持ちになります。
私は作品をつくる時、自分の中で物語をしっかり描き込みます。そうする事で作品に深みが生まれて、
見る人ごとの物語が生まれてくると思うからです。
今回のこの作品も、いつかきっと素敵な出会いに恵まれる事でしょう。
そうだったらいいな。
皆さまはどんな物語を描かれましたか?
そのお話を私にも聞かせて下さると嬉しいです。
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